原油高とSRI
原油高は弊害も多いですが、プラスの作用もありますね。
車の交通が減り、代替エネルギー開発・実用化に拍車がかかり、生産効率を上げる試みが促進されています。
過度に原油に頼らず持続性のある経済に世界全体の舵が動いているとしたら、それは長期の観点からは望ましいことでしょう。
環境関連ビジネスは間違いなく今後の長期的成長分野になるでしょう。
今でこそ、そんなの当たり前じゃんと誰もが思うようになりましたが、一昔前までは、本気でそう考えていた人は決して多くありませんでした。
環境破壊と気象異常、そしてエコ(地球環境に優しい行動)の必要性自体はだいぶ前から言われていたのですが、世界全体で本気で取り組むようになったのは、原油価格上昇で自らの生活が脅かされるようになってからですね。
きっかけはともかく、人類が生き残るために必要な環境の維持には今後も継続的に配慮していかなければと思います。
そのために、投資家ができることも多くあります。SRI(Socially Responsible Investment、社会責任投資)がその一つです。
昔は、SRIというと、宗教的理由から豚肉を使う企業の株を買わなかったり、倫理的理由からタバコ会社や兵器関連会社を買わなかったり、子どもを労働させたり女性幹部が少ない会社の株を売るようみんなに働きかけたりという行動がイメージされていました。
最近は、その定義と内容が変質してきていて、いわゆるESGと呼ばれる内容になっています。Ecology(環境)、Social Responsibility(社会的責任)、Governance(企業統治)です。要は、特定の考え方や集団の利益を主張するのでなく、「社会全体」をよくするための活動の性格が強くなったわけです。
もちろん、株式投資は個別判断ですから、各人・団体の考え方で自身の利益を第一に考えて投資しても良いわけですが、加えて社会全体の長期での発展・利益も考慮して投資しようというのがSRIです。
そしてそれを企業自身が意識しましょうというのがCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)です。
このSRIはプロ投資家の間では結構否定されてきました。企業とは元来経済的価値を追求する主体であり、株式投資もリターンを追求するものだ。兵器・タバコ製造関連企業であっても否定されるべきでなく、あくまで株式投資としてのリターンが評価基準になるべきだ。という論拠です。それはそれで一理あります。
いわゆるSRI投資家・活動家に、特定の考えや利害を声高に主張するばかりで、企業価値や株価の増大という株式会社や株式投資の本来の目的から外れる行動が目立ったことも、拒否反応を誘発した原因かと思われます。
これらの人たちはだいぶ減っています。経済価値を追求することは変わらないが、社会責任がこれだけ人々に認知されると、今度は社会責任をを無視して経済価値を高めることが難しくなったからです。
今でもSRIに懐疑的なプロ投資家は多くいます。
通常の株式投資において、株式アナリストは、産業分析や企業分析でSRIに近い観点でも当然に分析をしている。だから取り立ててSRIなどと強調するのは違うと言う人もいます。
それも一理あります。
この人たちは結局ESG基準には賛成で、自分もやっていることを他の人に取られた感じがしてすねているところもちょっと感じられます。だからといってSRI投資を否定する根拠にはならないでしょう。
一番説得力をもって受け入れられていたSRI反対論拠は、SRIファンドはそうでないファンドに比べてリターンが悪いという分析でした。
SRI基準で株式を選んだファンドは、純粋な経済判断以外がはいることによってリターンが落ちるという研究結果が多く発表されました。当時はそうだったと思います。コーポレート・ガバナンスという言葉が認知されるようになったのは、ここ数年ですし、エコを当時の全世界の人が深刻に考えていたわけでは無かったですから。
時代は大きく変わりました。
今では、SRIファンドがそうでないファンドに比べて優秀なリターンを上げられるとまではいえない、ただ、劣るともいえないという分析結果が主流です。
結局、時代がついてきているかどうか、みんながそれを重視するのかどうかが株式評価基準としての効力に影響するということでしょう。
今や、社会責任を考えることは、上場企業では当たり前になりつつあります。単に、植樹活動をしたり、CMでエコをアピールしているだけでは社会責任を果たしているとは受け取られません。
そこからESGのものさしを適用するときには、企業が本気で長期的に社会や環境に良い影響を与える活動をしているか、事業そのものがそういう活動か、そしてそれが株を売買する人たちにポジティブに受け取られるレベルかどうかが、企業の将来価値の判断に欠かせません。
当然、事業自体に魅力があって、経営能力がなければなりません。でもそこにESG基準を加えることはなんらおかしいことではないと思います。やり方に工夫は必要ですが。
もう10年以上前になりますが、ボストンで世界の巨大機関投資家の若手リーダーを集めた研修プログラムがありました。
そこで、「今後環境がSRIの中心テーマになると思う人はいるか?」と質問されたときに、手を上げたのは私一人だけでした。そのときは「えっ!?」と思い、ちょっと恥ずかしくなってすぐ手を下ろしてしまいました。
今ならほとんどの人の手があがるでしょう。自分では当たり前だろうと思っていることでも、意外と人はまだそう思っていないこともあります。そこに早く気づけばビジネスチャンスになり得るかもしれませんね。それに気づくのがまた難しいんですけど。
マネードクターでした。

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